ショーペンハウアーに学ぶ「無理しない仕事術」 ― 幸福とは“増やす”より“減らす”ものかもしれない
人生は基本的にしんどいもの?厭世家の仕事術
こんにちは。歴史好きイラストレーターの榎本よしたかです。
今日は、アルトゥール・ショーペンハウアーのお話をしてみたいと思います。
彼は19世紀ドイツの哲学者で、『意志と表象としての世界』『余録と補遺』などの著作で知られる人物です。
名前だけ聞くと難しそうですが、彼の幸福論は意外とシンプルです。極端に言えば、「人生は基本しんどいもの。だから幸福とは、嫌なことが少ない状態のことだ」という、徹底した引き算の考え方なんですね。 世の中に溢れる「もっとポジティブに!」「夢を掴もう!」というキラキラした言葉とは真逆ですが、仕事を長く続けていると、この感覚に救われる瞬間があるんです。
幸福は「足し算」ではなく「引き算」
ショーペンハウアーの幸福論は、とにかく引き算です。
・大きな成功を収めれば幸せになれる
・収入がもっと増えれば満たされる
・有名な賞を獲れば安心できる
こうした「プラスアルファ」を求める心に対して、彼はとても冷静でした。 「欲望は、一つ満たされてもすぐに次が出てくるだけだ。それは底の抜けた桶に水を注ぐようなものだ」と彼は言います。 だからこそ、幸福を「快楽を増やすこと」ではなく「苦痛を減らすこと」と定義し直したわけですね。
ビジネスに置き換えるなら、
・無理なスケジュールの案件を断る
・ストレスの強い人間関係から距離を置く
・背伸びしすぎる働き方をやめる
こうした「減らす努力」のほうが、結果として長く安定して働き、幸福度を高める近道になるのかもしれません。
孤独を愛した「偏屈な愛犬家」の知恵
ショーペンハウアーはかなりの孤独主義者で、他人との社交をむしろストレスの源として捉えていた節があります。 ここで一つ、彼の人となりがわかる有名な雑学をご紹介。
彼は生涯独身を通し、最後はプードル犬と一緒に暮らしていました。名前は「アートマン(サンスクリット語で“真我”という意味)」。 彼は人間よりも犬を信頼していて、犬が先に死んだら、その次の犬にも同じ名前をつけて可愛がったそうです。 彼にとって、静かな部屋で犬と過ごす時間は、何ものにも代えがたい「資源」だったんですね。
他人の評価は「自分の領域」ではない
ショーペンハウアーは、名声についても非常に辛辣な言葉を残しています。 「他人の頭の中に、自分の幸福の場所を探してはいけない」
現代なら、SNSの「いいね」の数や、フォロワーの反応が気になって夜も眠れない、なんていう状況に近いかもしれません。 でも、他人が自分をどう評価するかは、自分ではコントロールできません。 コントロールできないものに自分の幸福を預けてしまうと、心はいつも不安定になってしまいます。
「自分がどう生きるかは自分で決められるが、どう評価されるかは他人が勝手に決めることだ」 そう割り切ることで、余計なプレッシャーから自分を解放してあげられるのかもしれません。
積極的に幸せになろうとしない、という選択
「もっと前向きに頑張らなきゃ」とポジティブに自分を追い込むのは、意外と体力を消耗するものです。 ショーペンハウアーの考え方は、それよりも少し現実的です。 「最高に幸せになろうとするより、まずは最悪な苦しみを減らそう」
仕事は長距離走のようなものです。一瞬の爆発的なテンションよりも、淡々と持続できることのほうが、結局は遠くまで行けるんですね。 不要なストレスを削ぎ落とし、自分のペースを守ること。 それは決して「甘え」ではなく、プロとして走り続けるための「賢明な戦略」なのだと思います。
僕が実際にやめてみて、心が軽くなったものがあります。
・価値観の合わないクライアントとの取引
→ 無理に合わせることは、想像以上に消耗するからです。
・名刺の管理を完璧にやろうとすること
→ 名刺は「名前を確認する道具」と割り切ると、気持ちが楽になりました。
・確定申告などの経理作業を自分で抱え込むこと
→ 思い切って外注し、自分の時間と集中力を守る選択をしました。
何かを増やしたわけではありません。
ただ「抱えなくていいもの」を手放しただけです。
それだけで、驚くほど仕事は安定しました。
最後に少しだけ。 今日もし、仕事や生活の中で「もっと何かしなきゃ」と焦りを感じてしまったら、自分にこう問いかけてみるのはいかがでしょうか。 「今日、やらなくてもいいことは何だろう?」
嫌なことを一つ減らすだけで、明日の仕事は確実に軽くなるでしょう。幸福は「何かを手に入れたとき」にのみ訪れるものではなく、「余計なものを手放したとき」にも静かにやってくるのかもしれません。
おしまい。




