野口英世に学ぶ「コンプレックスの活かし方」― 弱みを燃料にした研究者の仕事術
弱みは消すより、燃料にしたほうが前に進める
こんにちは。歴史好きイラストレーターの榎本よしたかです。
今日は医師であり細菌学者の野口英世のお話をしてみようと思います。
旧千円札の人、世界的学者、努力の天才。 そんなイメージを持っている方も多いですよね。 でも、彼の人生を少し丁寧に見ていくと、実はずっと大きなコンプレックスと付き合い続けた人だということがわかります。
そして、そのコンプレックスが結果的に彼の凄まじい推進力になっていた。 そこがとても現代的で、仕事論としても教わることが多いなと思っているんです。
手術が人生を変えた
野口英世は幼いころ、自宅の囲炉裏に落ちて左手に大やけどを負いました。 指が癒着してしまい、ほとんど動かない状態だったそうです。
農村社会では、これはかなり厳しいハンディでした。 肉体労働も難しいし、見た目の問題もあります。本人も相当に気にしていたようです。
ただ、ここで人生の転機が訪れます。 恩師や友人たちの募金によって受けた手術で、癒着していた指が離れ、ある程度動くようになったんですね。 このとき英世は、「自分もこんな風に人を助ける医者になりたい」と強く決意したと言われています。
弱点から逃げるのではなく、その分野を深く理解する側に回った。 コンプレックスを正面から見つめることで、人生の目的を見つけたわけですね。
名前まで変えてしまった「負けず嫌い」
ここで一つ、彼の性格がよくわかるエピソードがあります。 彼の本名はもともと「清作(せいさく)」でした。 でも、当時流行っていた小説の中に、自堕落で借金まみれの「野口清作」という名前のキャラクターが登場したんです。
それを知った彼は「自分と同じ名前の男が、こんなだらしない奴だと思われるのは耐えられない!」と、なんと名前を「英世」に変えてしまいました。 それくらい、彼は周りからの見え方に敏感で、負けず嫌いだったんです。
貧困コンプレックスも強かった
英世は裕福な家庭の出ではありません。むしろかなりの貧困層です。そのせいか、彼はお金への執着も強かったし、見栄っ張りな一面もあったと言われています。借金癖も有名ですよね。
ここだけ切り取ると「だらしない人」に見えるかもしれませんが、別の角度から見るとこうも言えます。「評価されたい欲求が強かった人」。
これは現代のフリーランスやクリエイターにも結構ある感覚だと思います。認められたい。成功したい。格好つけたい。悪く言えば虚栄心。でも裏返せばエネルギーでもあるんですよね。
渡米後のブレイクも“執念型”
英世はアメリカに渡ってから評価されます。ロックフェラー医学研究所で細菌学研究に没頭し、梅毒スピロヘータの研究などで名を上げました。
ただ彼の研究スタイルは、いわゆる天才型というより執念型。寝食を忘れて研究するタイプだったらしいです。ここもコンプレックスと無関係じゃないと思うんですよ。
・田舎出身
・学歴コンプレックス
・身体的コンプレックス
・経済的不安
そういう要素が全部、「結果で証明しなきゃ」という動機になっていたように思います。
母シカの手紙という支え
そんな彼が異国の地で孤独に研究を続けていたとき、大きな心の支えになったのが母・シカからの手紙でした。 識字能力がほとんどなかった母が、一生懸命に人に教わりながら書いたとされる手紙です。
「はやくきてくたされ。はやくきてくたされ。」
この切実な言葉に、英世は人目をはばからず涙したと言われています。 「期待に応えたい」という気持ちもまた、人を動かす強い燃料になるのでしょう。
コンプレックスはなくならないけれど 英世は努力で道を切り開きましたが、弱点が完全になくなったわけではありません。 先ほども言ったようにお金にとてもルーズで、渡米資金として友人たちが集めてくれた大金を、送別会で一晩のうちに使い果たしてしまった……なんていう、とんでもないエピソードも残っています。
人間関係のトラブルも少なくなかったようですし、研究結果についても議論が残る部分もあります。あたりまえですが、完璧な聖人君子ではないんですよね。でも、そんな弱点だらけの自分を抱えたまま、彼は研究を止めませんでした。
「弱点ゼロになってから動き出す」のではなく、「弱点があるからこそ、それを補うために必死に動く」。 現代の僕らの仕事にも、通じる部分がある気がします。
弱みは、設計次第で武器になる
フリーランスでも会社員でも、コンプレックスって何かしらありますよね。 営業が苦手だったり、学歴への引け目があったり、年齢の焦りだったり、体力やスキルへの不安だったり…。
でも、その弱みがあるからこそ生まれる工夫が生まれる余地があると思うんです。
営業が苦手ならSNSの発信に特化するとか、学歴が気になるなら専門性と高めるとか、コミュ力が不安なら文章を鍛えるとか、体力に自信がないなら効率化を極める…等々。英世も似ていると思うんです。手へのコンプレックスが医学への入口になり、貧困への引け目が成功への渇望になり、孤独が研究への没頭に繋がりました。全て燃料にしたんですね。
ちょっとだけ現実的なまとめ
コンプレックスは、消そうとするとしんどいですよね。完全に克服できないものもありますし。だったら、「これをどう使うか」と考えてみると、前に進みやすい気がします。
野口英世の人生は、輝かしい成功物語というより、弱さを抱えながら一歩も引かなかった記録という風に僕には見えます。
もし今日、自分の嫌な部分が目についてしまったら。 それを無理に消そうとする代わりに、「これをエネルギーにしてどう使うか」と考えてみるのはいかがでしょうか。コンプレックスって、消えないですよね。努力しても残るし、むしろ歳とともに増えることもあります。でも、野口英世を見ていると“消そうとするより使う方がったほうが前に進む力になるんじゃないか”と思えてくるんです。
おしまい。




